相続に関する民法の改正3(預貯金の払戻し制度)

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相続に関する民法の改正3(預貯金の払戻し制度)

2019/12/18

相続に関する民法の改正3(預貯金の払戻し制度)

 今回の相続に関する民法改正のトピックは、「遺産分割前の預貯金の払戻し制度の創設」です。これは今年の7月1日から施行済です。これにより、遺産分割が終了する前であっても、各相続人が当面の生活費や葬儀費用の支払いなどのためにお金が必要になった場合に、被相続人名義の相続預金の払戻しが受けられるようになります。

 この払戻し制度は2つあり、まず一つ目が家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる制度です。各相続人は、1つの金融機関につき150万円を上限とし、相続の預金額の法定相続分の1/3の払戻しを受けることができます。

 具体的事例をあげていきます。預金額が600万円で妻と子2人が相続人とします。子は、法定相続分が1/4ですので、そのさらに1/3である50万円(600万円×1/3×1/4=50万円)の払戻しを受けることができます。この払戻しを受けた場合、その払戻金額分を遺産分割の際の具体的な相続額から差し引かれることとなります。

 急に世帯主がなくなったために、預金がおろせなくなって途方に暮れる、というケースはよくありましたので、個人的にはいい改正だと思います。とはいえ、払戻しを受けるためには相続を証する書面(戸籍謄本や除籍等)と払戻し希望者の印鑑証明書が必要であり、それだけの書類を揃える手間を考慮に入れる必要がありそうです。預けている金融機関の数が多い方は、戸籍等の原本還付手続き省略のために「法定相続情報証明制度」を活用されるといいかもしれません。

 そして二つ目が家庭裁判所の判断により払戻しができる制度です。これは、家庭裁判所に遺産の分割の審判や調停が申し立てられている場合に、各相続人は、家庭裁判所に申し立ててその審判を得ることにより、他の共同相続人の利益を害しない範囲において、相続預金の全部または一部を仮に取得し、金融機関から単独で払戻しを受けることができるというものです。仮払いの必要性を家庭裁判所に対して疎明しなければならず、手間と時間がかかるので注意が必要そうです。

 

続く