「筆界」と「所有権界」について

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「筆界」と「所有権界」について

2020/07/28

「筆界」と「所有権界」について

 過去の調査士のモノサシでも話題にした「筆界」と「所有権界」についてもう少し掘り下げていきたいと思います。

 私達が普段土地の「境界」として認識しているものは、「筆界」と「所有権界」に大別されます。しかしながら、それぞれを区別して認識されている方は少ないのではないかとと思われます。そこで、まずそれぞれについて簡単に説明してみたいと思います。

 「筆界」とは別名「公法上の境界」と呼ばれています。法律上では、「筆界=表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう」(不動産登記法第123条第1号)とされています。つまり、ある地番の土地を形成する外縁を「筆界」といいます。これは基本的に明治時代に地租改正された際、地番が公示されたときのものであり、お隣さん同士の話し合いで、勝手に変更したりすることのできない線形となります。これを変更するためには法務局に対して分筆登記や合筆登記を申請することによって整理していくことになろうかと思います。また、土地改良事業地や土地区画整理事業地は事業により整備された境界が「筆界」となっています。

 一方、「所有権界」は別名「私法上の境界」と呼ばれています。互いに接する土地において、その土地所有者同士の所有権と所有権がぶつかり合うところが「所有権界」です。通常、ブロック塀や垣根などにより物理的に区切られています。

 地租改正当時、「筆界」と「所有権界」は一致していました。しかしながら、時代が流れるうちに、両者で話し合いをして「所有権界」を変更したが登記を行わずそのまま「筆界」と「所有権界」が異なってしまっていたり、「筆界」を誤認してブロック塀を設置したため「筆界」と「所有権界」が異なってしまう、というようなケースが起きるようになってしまいます。それから数世代も後に、いざ登記をしようとして法務局資料を取り寄せたり、測量してみてはじめて「筆界」と「所有権界」が一致していないことが発覚する、という事案もよくあるようです。

 「筆界」と「所有権界」が一致していない場合、「筆界」か「所有権界」を整理し、現状に合致させる必要がありますが、トラブルに発展するケースも多く、整理に多大な労力や費用が必要となりかねません。両者で話し合って所有権界を変更したときは、同時に登記処理を行い、筆界と所有権界を合致させておくことが後々のトラブルを避けることになりますので、心にとどめておいていただければ、と思います。