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筆界特定制度と不在者財産管理人制度

筆界特定制度と不在者財産管理人制度

2021/06/28

筆界特定制度と不在者財産管理人制度

 我々土地家屋調査士は、隣接地所有者が行方不明の時に境界確認が必要な場合は法務局に申請する「筆界特定制度」を用いることが多いように思います。ただ、解決の方法としては、「不在者財産管理制度」もありそうだなと思ったので、書いていきたいと思います。

 民法上、従来の住所又は居所を去って容易に帰来する見込みのない者を「不在者」というのですが、「不在者財産管理制度」は、家庭裁判所が利害関係人等の申立てにより不在者財産管理人を選任し、不在者の財産を保存することで不在者の財産散逸によって受ける不在者の損失を防止し、利害関係人の利益も保護するという制度です。不在者財産管理人は、不在者の法定代理人として、不在者の財産の管理・保存をする権限があります。隣接地所有者について不在者財産管理人が選任されれば、その不在者財産管理人に隣接地所有者の代理人として境界確認の立会をしてもらい、筆界確認書への署名捺印をしてもらうことができるようです。

 不在者財産管理人を選任するためには、そもそも対象者が「不在者」である必要があります。不在者財産管理人選任の申立ての際には、不在を証する資料を添付する必要があります。また、不在者財産管理人の選任には、別途不在者の財産の管理人がいないことを要するので、この点も確認する必要があります。以上の確認が取れたら、利害関係人が不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所に対して不在者財産管理人選任の申立てを行うことになります。

 上記の場合であれば隣接地所有者の親戚縁者も分からないと考えられるので、司法書士や弁護士等の専門家を不在者財産管理人として申立てすることになりそうです。申立人としては、不在者財産管理人選任の申立てをする場合に通常数十万円の費用の負担が発生します。また、不在者の財産から管理費用や不在者財産管理人の報酬を捻出する見込みがない場合は、予納金として30万円から50万円ほどを納付するのが通常とのことです。不在者が現れたとき、不在者について失踪宣告がされたとき、不在者が死亡したことが確認されたとき、不在者の財産がなくなったとき等まで、財産管理人の職務は続くことになります。申立てのきっかけとなった当初の目的(例えば境界確認など)を果たしたら終わりというものではありません。

 以上を踏まえると、境界確認のためだけに「不在者財産管理制度」を用いるのは申立人及び不在者財産管理人の負担が大きいように感じました。法務局も公式HP内の筆界特定制度に関するQ&Aで、「隣接地所有者の行方不明は筆界特定をする必要があるときに当たると考えられる。」と回答していますので、「筆界特定制度」を用いた筆界確認で良いように思います。

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