筆界特定制度の利点と問題点-2
2019/11/04
筆界特定制度の利点と問題点-2
続き
「筆界特定制度」の問題点として、まず必ずしも筆界特定で特定される筆界が筆界「線」ではないことが挙げられます。そもそも筆界・境界というものは点と点を繋いだ線で形成されるものです。しかし、「筆界特定制度」で特定される筆界は、明治時代の原始筆界を特定する場合などには資料が乏しく、どうしてもピンポイントで特定できない場合も出てきます。この場合、「この帯状の範囲のどこかが筆界である」と特定されてしまう場合があります。これでは自分の土地の筆界を確定し、分筆登記をしたいがために筆界特定申請を出したとしても、境界が点で確定しておらず面積も定まらず、分筆登記も出来ないことになります。分筆登記をするためには筆界特定訴訟までする必要が出てきかねません。
また、筆界特定がされた筆界については、原則同じ筆界について再申請できません。筆界特定後新たな資料が見つかった場合等にも筆界特定訴訟に進むことになります。ちなみに、筆界特定の資料が偽造されていたり、脅迫等により正しい意見の提出が妨げられたりした時等、再申請できる例外もいくつかあります。
さらに、筆界特定は新たに筆界を決めるものではなく、公的機関による判断の証明に留まる(行政処分ではなく、法的に不可争力をもって筆界を確定するものではない)ということになってるので、たとえ筆界特定された場合でも、当事者のどちらかがその結果に不満があるときは裁判所に筆界確定訴訟を提起することができます。筆界確定訴訟の判決により形成された筆界が筆界特定の結果と相違するときは、筆界確定訴訟の判決により形成された筆界が公的に正しい筆界となり(判決には形成権がある)、筆界特定の内容はその証明力を失います(筆界特定には形成権がない)。
あと、筆界特定書で特定した境界ですが、特定書内では座標値等で位置は特定されているものの、現地に境界標が設置されません。境界標の設置は相手方の合意をとった上で別費用を出して設置することになります。ですが、これって境界紛争が元で筆界特定をした場合はハードルが高いような気がします。
続く
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